色々と外野からのノイズが多い作品だったが初日に観てきた。
俺は旧アニメに全く思い入れがないので声優交代はどうでも良い。ただ、原作にはめちゃくちゃ思い入れがある。数え切れないくらい繰り返し読んだ。バスケをプレイするようになったのも、バスケ部に入ったのも、NBAを観るようになったのも、スラムダンクが全てのきっかけだ。そんな漫画が映画化される。予告動画のクオリティを見たところだと一抹の不安は拭えない。そんな感じで見たのだがその評価は…。
5億点!!!!!
今作でフューチャーされたのは桜木花道ではなく宮城リョータ。井上雄彦氏曰く、今スラムダンクを作るとしたら、それほど原作の中でスポットが当たらなかった彼を中心に描きたかったとのことだ。原作では描かれなかった彼の過去のドラマパートと原作屈指の名試合である山王工業戦が交互に織りなす作品となっているだけれど、とにかく試合のパートのクオリティがとんでも無く素晴らしい。
試合冒頭からThe Birthdayの楽曲のともに湘北のアイツらが登場するシーン。まるで解散したすげー好きだったロックバンドが再結成したライブでステージに現れた時を目撃したような高揚感。そして対峙する山王工業。
正直The Birthdayとスラムダンクって食いあわせ悪くない?って思ってたんだけど、全然そんなことはなく。むしろ湘北メンバーのアウトローな感じとマッチしていたように思う。そして試合描写なんだけれどとにかく観てくれや、としか言いようがない。俺の貧弱な言葉じゃ言い表せない。山王戦が完全に動いている。そうとしか言いようがない。そしてそれは完全にバスケットボールの試合として。
旧アニメの問題点としてキャラクターの心情描写やセリフを喋らせるためにバスケットボールの試合が間延びされていたように思うのだけれど、今作は一切そんなことはなく、バスケットボールの試合を描き切っている。そして何度も何度も繰り返し読んできた試合展開が目の前で繰り広げられる。結末だってもちろん知っている。だけど湘北のメンバーが活躍する度に心の中でガッツポーズが出てしまう。あれ、これちゃんと立ち上がって応援した方がいい?とすら思ったし、ちゃんと山王に勝てるよな…とドキドキしたりした。そして、これ、あんま言いたくないんだけどさー、花道が怪我してベンチに下がるところさー、泣いちゃった…。正確に言うとベソかいちゃった…。全て知ってたはずなのによー。そりゃあさ、山王を応援してた人たちも湘北を応援するよな…。
そこからの試合描写ももちろん最高だったんだけど、ラスト40秒弱のシーン。原作ではセリフや効果音がなく絵のみで描き切られたシーンなのだが、完全に100%正解としか言いようがなく映像化されていた。花道の「左手は添えるだけ」と言うセリフ、声は出ていなかったんだけれど、俺には完全に聴こえたね。試合の描き方に関してはあの台詞がない、あのシーンが無いという文句があるらしいけれど、そんなのはちっとも本質的なものじゃねー。
そうそう、今回リョータを中心にした構成であることによって、花道の異質さ、そして救世主感がめちゃくちゃ際立っていたように感じた。
一方のリョータを中心としたドラマパートも良かったのだが、こちらはスラムダンク以降の「バカボンド」「リアル」での井上雄彦が持つ作家性が強いように感じた。原作を知っていると一部の矛盾するところや後付け感があったりするものの、これはそういうもの、として受け取ることができた。リョータの原作では描かれなかった面が十二分に描写されていた。
また、予告動画で気になっていた3D映像のクオリティに関して言えば、全然気にならなかったどころか、よく出来ていると思ったし、とりわけこのドラマパートでの「井上雄彦の絵がそのまま動いている」ことに強く寄与していたように思う。
全体的に言えば井上雄彦が自分が満足するようにやりたいようにやった感があるんだけれど、それが絶妙に原作好き、特に「スラムダンクのバスケットボールが好き」な人の心をど真ん中に射抜いてきた、そんな作品だったように思う。
てなわけで、旧アニメ無関心派の原作厨の俺的には素晴らしい作品だったんだけれど、もちろん気に入らない点や重箱の隅を突きたくなるところはある。だが、今はそんなことは言わない。原作好きなやつはつべこべ言わずに観ろ。
あ、一応補足しておくと、完全に原作読んだ人向けの映画です。
余談だけれど、The Birthdayがオープニング主題歌やってて、バスケをやろうと思ったきっかけであるスラムダンクと、ロックバンドをやろうと思ったきっかけの1人であるチバユウスケがクロスオーバーしてたのも非常に感慨深いものがあった。