当時、シネフィルになろうとしていた*1俺は名作と名高い、フェデリコ・フェリーニの「8 1/2」を観た。しかし、全然意味が分からなくって、ただひたすら退屈な映画としか感じることができなかった。ラスト間際の名台詞「人生は祭だ」云々は心に残ったけれど、ただそれくらい。そして、俺はシネフィルになることをあきらめて、映画は暇な時にたまに観る程度となった…。
それから約10年の月日が経った。映画の知識は未だにゴミクズみたいなものだけれど、色んなものを吸収して少しは色々なものを理解できるようになった。今なら「8 1/2」を退屈で、つまらない映画けど何か意味深っぽい映画という評価ではなく名作、傑作、最高の作品だ!という評価を下せるんじゃないだろうか?というわけで、昨日TSUTAYAでブルーレイを借りて観た。
んで、感想なわけですけどやっぱりワケわかんなかったです。冒頭のザ・ワールドな世界から現実に引き戻されるシーンも何を示しているのか分かんないし、どこから妄想でどこから現実かよう分からん。けど、何となく「考えるな。感じろ。」的な類の映画なのかな、というのはボンヤリと理解できたようなできなかったような。また、あっちこっちをシームレスに行き来しているという映像はただ単純に観ていて気持ちは良い。いや、気持ち悪いかも。うーん、どっちかな。ラストシーンの唐突に訪れる大団円も意味不明。あ、主人公のグイドはフェリーニの自己投影であるっていうのは理解できてます。
グイドが周囲の協力者達に言われる「観客に分かりやすい映画を」とか「意味の無いエピソードの羅列だ」とか「前衛映画としての長所も無く、その欠点のみを持っている」といったセリフは観ていてゾクゾクした。フェリーニという人間を俺は良く知らないっつーか、全然知らないんですけれど、自分の撮りたい映画と周囲が撮ってほしい映画、観たい映画とのギャップに苦しんでいたんでしょうか?それとも、単なる皮肉でしょうか?
結局、10年ぶりに観たこの映画はやっぱり良く分からなかった。じゃあ、つまんなかったか?駄作なのか?と聞かれたら決してそうじゃないんですよねぇ。別にストーリーが面白いわけでもないし、全体的に捉えどころのない感じに溢れているんだけれど、その捉えどころの無さが良い、みたいな。曖昧だけど、そんな感じ。10年後にまた観たら、印象は変わってくるのだろうか?
★★★
余談ですけれど、この映画を観ていて何かに雰囲気が似ているなあと思ってたんですけれど、Arthur Russellの「WORLD OF ECHO」を聴いている時と同じような感覚だった。フワフワしていて、捉えどころがなくて、意味も意図もあまり理解できないけれど、何となく良い感じの雰囲気、空気感を感じられて、何だかトリップしたような感覚に陥る。そこらへんがこの「8 1/2」とアーサー・ラッセルは似ているように思った。
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*1:今思えば、シネフィルなんてなろうと思ってなるもんじゃない