映画における嘘とリアリティ

今、MCUを順を追って観よう期間に入っており、一番最初の『アイアンマン』から観ている。こないだは『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』観た。んで、Twitterにも書いたんだけれど、この映画に関してどーしても納得がいかない点が二つ。一つは敵役のドイツ軍のドイツ人がドイツ人同士で英語で会話している点。もう一つが、米軍内において黒人と日系人が編成され、かつ白人と対等に扱われている点。舞台は第二次世界大戦なのだが、この二点に関して、あまりにリアリティがなさすぎるだろ、と感じざるを得なかった。前者に関してはドイツ語で会話させておいて、字幕にすりゃあいいだろう。後者に関してはポリコレ的な配慮があったのだろうが、1940年代のアメリカといえば、公民権運動やマーティンルーサーキングやマルコムXも登場する以前であるし、コーカソイド以外に対する差別も非常に強かったであろうことは容易に想像できる*1。ストーリーや出来に関しては優れたものがある、っていうか普通におもしろい映画なんだけれど、この二点がやっぱり納得がいかない。スーパーヒーロー物の映画にリアリティを求めるなよ、という向きもあるのかもしれないのだが、逆にスーパーヒーローというハッタリをかますのならば、それを取り巻く描写などに関してはリアリティがあったほうがいいんじゃないかなあ、と思う。そうじゃないと嘘の上塗りになるんじゃないかと。特にこの作品の場合、第二次世界大戦という実際の出来事、歴史を下敷きにしているのであれば、そういった点の描写はなるべく現実に即してリアリティがある描写をした方が良いのではないかと思う。

ボヘミアン・ラプソディ』。クイーンにはそれほど思い入れはないのだけど、おもしろい映画だったと思う。ただ、あとあと調べたところによると、実際の出来事をそのまま描いたわけではなく、物語として映えるように脚色を入れたフィクションな部分がいくつかあるそうだ。だが、この映画に関しては脚色があろうがリアリティはあったと思うし、特に納得できない点はなかった*2。しかし、例えばクイーンが楽曲制作に当時登場していない機材...ProToolsを使った、みたいな描写があったとしたら、それってどうなん、って思う。ってかウソにもほどがあんだろ。興ざめさせるには十分な材料となりえる。ヒーローの物語と実際に存在したロックバンドの物語を比較するのは論外なのかもしれないけれど、おれとしては『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』がやってしまっているのは、それと同じレベルのことだと思う。同じマーベルの『マイティ・ソー』なんかの場合、北欧神話をベースとした地球外の登場人物たちの話で、その舞台の時点で大嘘なわけで、浅野忠信が出てこようがなんだろうが、まあそういうもんなんだろう、という納得感はあるのだが。

シン・ゴジラ』。『キャプテン・アメリカ』に関して考えた時、この映画がぱっと思い浮かんだ。大前提として怪獣という大嘘を入れているのだが、現代日本を舞台としたそれ以外がホントっぽい。もちろん、政府の動きが実際にあのような感じなのかはわからないし、リアルかと言われたらそうではないのかもしれない。それでもリアリティは十二分に感じられるし、それがあの映画の面白さにも通じているのではないかと思う。

*1:第二次世界大戦中における米軍でも日系人部隊、黒人部隊というのはあったらしいが

*2:めちゃくちゃクイーンオタクな方からしたらどうなのかはわからないけど