山本精一『Falsetto』を聴いた

Falsetto

2011年の『ラプソディア』以来実に2年半振りとなる山本精一オリジナル・フル・アルバムが遂に完成。
ポップにおける冴えわたるミニマムなアプローチ、、、、これぞ山本精一のアルバム。
プログレ、音響系、サイケ、フォーキー、、あらゆる要素をかね添えた奇妙で大胆で繊細な「歌もの」世界。
ドラムスに千住宗臣、ベースそしてあらゆるギター、プロデュース山本精一

 2011年にリリースされた『ラプソディア』は傑作だった。羅針盤からの流れを汲んだ山本精一の「歌もの」はある意味、俺が期待した通りのものだった。いや、ちょっと語弊があるな。期待した通りの音なんだけれど、期待以上にそれが良かった、と言うべきか。そして、この新作(といってもリリースされたのは7月だけど)も期待通りの音で、且つ期待以上の出来だった。『ラプソディア』はフォーク/ロック色の強い作品だったけれど、今作はもっと浮遊感が強くサイケデリックなニュアンスが強いな、と感じた。だけど、真ん中にあるのはあくまでも歌。羅針盤でもそうだったし、ソロでもそうなんだけれど、山本精一は歌に対するこだわりが凄く強いなー、と個人的には感じる。バンドサウンドもそれはそれで重要だけれど、あくまで中心にあるのは歌、というような曲作りをしているような気がする。まあ、俺は山本精一じゃないんで、そう感じるだけ、なんだけれど。実際にどう思っているのかは知らん。

 で、歌の話をしたにもかかわらず、バンドサウンドの話をするんですけれど、最終曲であるtr7の"POWDER"のミニマル感がすげえいいなあーって思った。11分もある曲なんだけれど、歌とバンドサウンド含め、聴いていてめちゃくちゃ気持ちいいし全く退屈しない。ずっと聴いていたくなる。なんとなく、この気持ちよさはゆらゆら帝国の"無い!"を聴いている時に似ているなあ、と思った。ベースラインも印象的。後期羅針盤にも重なるけれど、後期の羅針盤って好きではあるんだけれど一種の気だるさ、みたいなものが漂っていたと思う。けど、このアルバムに収められた曲は重なりはするんだけれど、そういった気だるさは皆無。無駄がない、と感じた。あと、今や山本精一のパートナーとも言える千住宗臣のドラムもいいと思います。出すぎず、出なさすぎずでちょうどいい塩梅に歌を引き立てていると感じた。

 山本精一は変な音楽もやっているし、こんな感じで日常の傍らに寄り添うような音楽もやっている。俺はそのふりはばが魅力に感じるし、もうどこにでもついていく、という感じ。ROVOやPARAでギターを弾く山本精一も好きだし、ちっさいハコでギターをつま弾きながら歌う山本精一も好きだ。