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クズなやつがクズのことを書いている

 非常に恥ずかしいことなのだが、この歳になって初めて『走れメロス』以外の太宰治の作品を読んだ。おれが本を読まないかというと、読まないわけではない。多くはないものの、人並みには読んでいるとは思う。だが、なぜだか太宰治はなかなか手が伸びなかったのだ。なんとなく「太宰の書く本はダルそう」とかそういう理由で。そういう風に30年生きてきた。しかし、2月に入って急に気分が太宰になったので、太宰の本をkindleで片っ端から買って読み漁っている。青空文庫万歳。とりあえず『富嶽百景』『人間失格』『斜陽』を読んだ。

 そんな感じで三冊読んだのだが、とてもおもしろく読めた。太宰治という人間はクズであると知っていたのだけれど、想像よりも輪をかけたクズだなあ、と『人間失格』を読みながら感じた。『斜陽』もロクな登場人物が出てこない。良い。古い作家では坂口安吾、現代の作家では町田康あたりが好きなのだが、この人らが書く小説もたいていクズのような人物が登場しており、おれはそういうのを割とおもしろがれるので、そりゃあ太宰の小説もおもしろがれるよな、と思う。まあ、坂口のはどっちというとクズというより、メンヘラっぽい登場人物が多い気がするが。

 太宰は自分のクズっぷりを自虐的に書いているような部分が多くて、嫌いな人は心底嫌いだろうなと思う。おれも読んでいて「こいつ気持ち悪いな」などと感じたりはする。だが、そこがいいなと思う。太宰自身を投影したであろう登場人物達のクズなところとか、グチグチしているところとか普通ならばいらいらすると思うのだが、読んでいても何故だかいらいらしない。なんでかは分からんけれど。そして、そういうところが太宰がモテていた理由なんだろうな、と思う。ただ、金持ちのボンボンでドラッグと女遊びに呆けていたクズということには変わりはないけれど。

 あと、10代に読まなくてよかったかもなあ、と思っている。