BOATを聴いて夏を終わらせるなxxxx

あれはたしか、俺が大学一年生のころだっただろうか。当時、神保町にあるジャニスというレンタルCD屋に通いまくっていた。ここのレンタル屋はTSUTAYAとかにはあまり置かれていないアンダーグラウンドシーンのアーティストや廃盤のCDもレンタルすることができて、金は無いけれど音楽的に非常に貪欲だった当時は非常に重宝した。最近はあんまり行っていなけれど。

そして、その日も学校帰りにジャニスに行こうとしていた時、サークルの先輩から「BOATっていうバンドのCD借りてきて」と金を渡された。自分で行けよ・・・と思いつつ、BOATのアルバムを4枚と他に幾つか借りて、家に帰ってCDをPCに取り込み、借りたCDをステレオで聴いた。その時聴いたのがBOATの『Listening Suicidal』というアルバム。なにげ無く聴いたこのアルバムに「なんじゃこりゃー!!」と感動した。

オルタナプログレ、ファンク、ハードコア、シューゲイザー、ポストロック全てを飲み込み、男女ボーカルで仕上げて結果的にめちゃくちゃポップな楽曲群に打ちのめされた。一見コンセプトが無いように見えるし、方向性もあっちこっち行きまくっているし、ワケ分かんないのだけれど何故か一貫性があるとか、もうそんなの関係なくて素晴らしすぎてビックリ。「借りてきて」と言った先輩に土下座して感謝したいくらい。tr2の"Planet Foxy"は女性ボーカルが入る瞬間には未だに鳥肌が立つし、"狂言メッセージ"のアタマがイカれたジャクソンファイブのような狂ったポップネスも素晴らしいし、最もポップな"代打デストロイ&サーチ"の「I Love You Dead Fish Eyes」という歌詞が最高だし。一方のポストロック、プログレ的アプローチの"グッバイ・マイ・ストレンジ・ナンバー28"や"雲番人Bと釣人A"も好きだったし、そしてラストナンバーの"Don't You"までアホみたいに聴き狂った。


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1996年、慶應義塾大学の音楽サークル仲間だったAxSxE、しおり、坂井キヨオシ、マユコで結成。当初はジミ・ヘンドリックスコピーバンドだった。1997年の年末、AxSxEが坂井の家へ行くため東急東横線に乗っていたところ、同じ車両にいたアインが話しかけてきたことがきっかけとなりアインも加入、メンバーが揃う。
1998年にはバッド・ニュースからファーストアルバム『フルーツ☆リー』を発売し、ROCKIN'ON JAPANにニューカマーとして紹介された。同年末にはズボンズのライブツアーにオープニングアクトとして参加した。
都内のライブハウスを中心に活動していたが、2001年9月28日に、しおり、マユコ、坂井が「卒業」し、事実上の解散となる。「卒業」後は、AxSxEとアインが中心となりNATSUMENを結成、活動するも2006年より活動を休止。

BOAT - Wikipedia


もう今は活動していないし、俺が初めて聴いた時にも既に解散していた。NATSUMENはライブも何度も観たことあるけれど。俺はこのAxSxEという人が大好きというか、ミュージシャンとして尊敬していて、今のアカウント名もAxSxEさんを真似て名付けたりしている。そんな、AxSxEさんとの出会いが、上記したBOATの『Listening Suicidal』だった。そして、BOATのこれ以外の3枚も素晴らしくて、特にラストアルバム(ミニアルバム?)の『RORO』が素晴らしすぎる。俺の中ではBOATの最高傑作。というか邦楽のオールタイム・ベスト。

RORO

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前作の『Listening Suicidal』のプログレ/ポストロックアプローチを急激に押し出した感じ。普通のロックバンドだと幾つか段階を踏んで音楽性を変えるものなのだけれど、BOATはその段階を5つも6つもすっ飛ばして『RORO』に達した。そんでこの作品のテーマと言えば一貫して「夏を終わらせるな!」という言葉。この言葉はAxSxEさんが酔っ払いだかホームレスだかに投げかけられた言葉らしいのだけれど、その言葉にふさわしく、夏が持つ悠久/哀愁が表現されているように感じる。一曲目の"ALL"からストリングスが前面に押し出されていて、音が洪水しているかのような感覚を覚える。このアルバムで最も好きな曲は"Tuesday"。"ALL"と同じくMOGWAIのように徐々にテンションをあげていくような楽曲なのだけれど、上記した夏のノスタルジーさが最高にエモく、これ以上テンションが上がり切らないだろ、というところからさらにもう一段階テンションを上げてくる、というのにヤラレれた。メロディーも非常に良い。


このアルバム以外は全て中古とかで買い直した。何故このアルバムだけ持っていないかというとプレミアが付いていて非常にお高いから。最近はマシになっているけれど、一時期は平気で2万円くらいが相場だった。今でも1万円くらいするんじゃないかなー。誰か譲ってくれよー。けど、実は渋谷のTSUTAYAにレンタルで置いていたりする。聴きたい人はぜひ。(追記:今見たら5000円だった。うわー悩む。)


さて、ここまで書いたアルバム2枚はメジャーで出したアルバムで残りの初期2枚はインディーのアルバム。ROROを聴いた後だとこの初期2枚聴いて、とてもじゃないが同じバンドの音に聴こえない。『RORO』はプログレッシブでエモーショナルなのだけれど、初期の2枚はバカでノー天気なドポップな音楽。だけど、俺はBOAT信者なのでこの2枚も最高に好き。

フルーツ☆リー

フルーツ☆リー

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SOUL.THRASH.TRAIN

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この2枚も相変わらず頭トチ狂っているんだけれど、なんというかポップスに誠実と言うか、バカなんだけれどちゃんとやろう、という感じが伝わってきて非常に良い。『Listening Suicidal』の所で「アタマがおかしいジャクソンファイブ」みたいな表現をしたけれど、この2枚は正にそう。そんで、音楽とかロックの楽しい感じが表現されていると思う。2ndの"KILL / KILL"とかね。ただ、1stに収録されている"夕日"などAxSxEさんの哀愁メロディが爆発している曲もあったりと、非常にバラエティ豊かで聴く価値あるというか、聴け!この2枚はメジャー期の2枚よりも比較的手に入りやすいし。



NATSUMENAxSxEさんについてはまた機会があったら書こう。