元気一杯@博多に行った

 先週、博多に出張していた。仕事は金曜日の夜までで、土曜日はOFF。なので、ついでに「高菜、食べてしまったんですか!?」のコピペ*1で有名な元気一杯というラーメン店に行ってきた。基本的に居丈高な態度を取る店は嫌いなのだが、ラーメン好きでもある。仕事が変わって出張が多くなったといっても、全国津々浦々なので、博多に行く機会がしょっちゅうあるわけでもない。せっかくの機会なので、ということで、行ってみた次第。おれは散歩と写真撮影がてら天神から歩いて行ったのだけれど、博多駅からだとバスで5~10分くらいで着く。だらだらと歩いて地図を見ながらそこに辿り着いた。

 …入りづれぇ。看板も何もなくて、バケツが置いてあったら営業中の合図である、というのは知っていたし、店構えもこんな感じだというのもネットの写真で見たのだけれど、実際に目の当たりにするとすげぇ入りづらい。おれはヘタレなので「やっぱ、やめとこうかな…」と思ったりしてしまった。というか、来る前に鹿肉の煮込みと猪肉のスペアリブを食ったうえ、ビールを飲んでしまったじゃないか*2。別に食べようと思えば食べられるけれど、食べなくてもそれはそれで平気な感じの腹具合だ。しかも前日にもラーメンを二杯食ってるじゃないか。そんなに食ったら太る。大体、こんな傲慢な商売をしている店にカネ払って売り上げに貢献するのもアホらしい。帰ろ、帰ろ。

 ということで、いったん店の前を離れて、港の方まで歩いた*3。港の近くのホールではSuper Flyがライブをやるらしく、アーティストのTシャツを着たファンがたむろしていたり、グッズの物販が行われていた。おれは煙草を吸いながらその様子を眺め「せっかくだからグッズを買って帰ろうかな…」なんて思ったりした。Super FlyのCDは一枚も持っていない。グッズ売り場を一通り眺めて、やっぱ別にいらんな、と踵を返して博多駅まで歩いて行った。路地を入ったり、出たりして、写真を撮りながら。そうやっているうちに、再び「元気一杯」の前に辿り着いた。

 おれは思った。やはり、このまま東京に帰ってしまうのは、負けな気がする、と。まあ、別に勝ち負けもクソもないのだが、ビビって帰るのはなんかダサい。清水の舞台から飛び降りるような気分でその扉をガラっと開けた。オープンザドアーだ。今後は「元気一杯の扉を開ける」という言葉を「清水の舞台から飛び降りる」の類義語として使用していきたい気持ちがある。

 「いらっしゃいませー!!」と甲高く、元気よく、しかし高圧的でヒステリックな感じの挨拶で女性店員がおれを迎え入れる。これが噂の"奥さん"か…。思ってたんと違う。もっとオバハンっぽい感じの人をイメージしていたのだが。まあ、そんなことはどうでも良い。イメージと違おうが違わなかろうが、おれはこの人と対峙しなければならないのだ。15:00も過ぎた頃だったので、店は空いていた。おれはカウンター席に座り、水が提供されると共に「ラーメンで」と、まるで西部劇の賞金稼ぎがバーで酒を注文するかのような、そんな渋い感じで告げた。気分はクリント・イーストウッドだ。すると一瞬、無言の間が空き(やべぇ、なんかやらかしたか!?)と思ったのだが、「ラーメン一杯ですね!ありがとうございます!」と応答があったので胸をなでおろす。携帯電話の使用は禁止されているため、目の前の壁や、店のこだわりが書かれた紙を眺めたりする。カウンターの上には割り箸と共に伝説のトラップ、高菜が鎮座している。これが、例の、あの、あれか。と思ったりしながら、4、5分経った頃、ラーメンが提供された。

 白濁したスープの中には白っぽい麺。具はキクラゲ、青ネギ、チャーシュー、とシンプルな感じ。普段なら写真を撮るのだが、この店でそれをやってしまうと待つのは死。グッとこらえる。「スープからお召し上がりください」と言われたので、その通りにする。「食ってんのか、食わされてんのか、本当の所はどうなーん?」というリリックが頭の中で流れる出すが、それに従う。ここでは法も何も通用しない。あるのは店の鉄の掟のみ。ズズっとスープを2、3口飲む。うむ。拘っているだけあって、確かに旨い。まあ、こっからは普通にラーメンを食べる。感動するほどの旨さではないが、確かに旨い、みたいなそんな感じ。食っている間に何人か他の客がやってきたのだが、掟破りをやらかして、追い出されたりしないだろうか、とドキドキしたりしていた。なので、そういうなんだか嫌な緊張感を持ちつつもさっさとラーメンを平らげる。もちろん、高菜も食った。旨かった。そして、辛かった。高菜、食べてしまいました。

 700円を支払い、店を出た。きっと、その時のおれの顔は何か大きな一仕事を終えた、そんな顔をしていたんじゃないだろうか。鹿野。おれはやったよ。そんな気持ちを心の中に抱きながら、福岡の地を発った。

 以上、レポっす。

*1:元ネタは鹿野淳氏のブログ

*2:当日、散歩していたらジビエ料理のイベントが開催されていた

*3:これは余談なのだが、福岡を歩いていて北側が海で、南側が山ということにめちゃくちゃ違和感を感じた。おれが住んできた土地では海は南で、山は北なのだ。まるで磁場が歪んでしまったかのような錯覚に陥る。