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【読書】『文化系のためのヒップホップ入門』長谷川町蔵x大和田俊之

文化系のためのヒップホップ入門 (いりぐちアルテス002)

読もう読もうと思いながら早数年。やっと読んだ。

俺は元々はロックリスナーであって、ヒップホップはそんなに手を出していなかった。当然、曲は聴いたことあったし、アーティストの名前も知識として、それなりには知っていた。何年か前にTHA BLUE HERBをキッカケに色々と手を出すようになった。ただ、そんなにディープに突っ込んで追いかけているわけではない。浅く、広く、という感じ。手を出し始めてからそんなに年数も経っていない。未だに一番良く聴くのはロック。

本来ならば「ヒップホップ?興味はあるけれど、よく知らない」という人にジャストする本なのだろうが、「少しは知っている。ヒップホップも好き。しかし、歴史を含めてディープに知らない」という俺のような人にも楽しめるという印象。いやいや、放置していて今更読んだことを後悔。


さて、内容で面白いなあ、と思ったのがヒップホップは音楽じゃなくて、ゲームだ!という長谷川氏の主張。いやいや、音楽だろ?というツッコミはあると思うし、俺も音楽だと思うんだが、確かにヒップホップはゲーム的側面も非常に強い。どういうことか?長谷川氏はヒップホップとは一定のルールのもと、参加者が優劣を競い合うゲームであり、コンペティションであるという。たしかに、言われてみればヒップホップのひとつの要素としてビーフやディスがある。そして、相手を打ち負かすためにスキルが磨かれ、スキルの革新が起こる。そして、それに勝てない、つまり時代についていけないラッパーはゲームから脱落していく=シーンから消える。

話は少しそれるが、俺の好きなスポーツの一つにバスケットボールが挙げられる。今はやれていないけれど、プレーもしていたし、NBAを観るのも好きだ。NBAの何が面白いかというと、当然プレー自体も面白いんだけれど、トレードやFAが活発でドラマチックである、という点があげられる。日本のプロ野球ではトレードやFA移籍も増えたと言われているが、NBAでのそれの多さはプロ野球の比じゃない。大物選手が移籍するなんてザラ。「生え抜き?なにそれ美味しいの?」な状態。あの選手があそこに移籍してこのカンファレンスの勢力図は変わるなあ、このチームは再建モードに入ったな、このトレードは大きな賭けだなあ、などなど、そういうのをウォッチしているだけでも楽しい。

そして、ヒップホップにもそういう要素はある。本書で登場する大和田氏のゼミ生M君。彼はヒップホップを音楽的に語るのではなく「誰と誰がビーフしている」とか「誰が誰をディスった」とか「誰が別のレーベルに移籍した」とかそういう面ばかりを語る。従来の音楽リスナーからしたら「ちゃんと音楽を聴けよ!」と叱られるかもしれないけれど、ヒップホップの楽しみ方の一つとして、こういった「ゲーム的要素」というのは欠かせない。

プロレス的でもある。プロレスファンの中にはプロレス自体は見ないで、雑誌ばかりを読んで「どういった構想がある」とか「アイツがあんなことを言った」という面を楽しむ人も少なくないらしい。そのうち、「紙で楽しむヒップホップ」みたいなのも生まれたり、、、無いか。


また、「ヒップホップは場を楽しむものである」という考え方も興味深い。音楽的な面に加えて、上述したようなゲーム的要素を持ったヒップホップという場=シーンは、従来の個を重視したロックとは大きく異る。個々に好きなラッパー、アーティストというのはいるが、それよりもそれぞれのシーンに対しどういう音が鳴らされているか、どういう背景があるか等、そういった面を楽しむ。特定のシーンでいかに作品に関わりあったかという経験を非常に重要視する。

これって何かに似ているなあと感じた、というか、本書でも語られているんだけれど初音ミクを中心としたボーカロイドシーンとも似ていると感じた。以前も述べたように個人的にはボカロは聴かない。だけど、そこのシーンで音楽を享受して楽しんでいる、という「経験」はとてもおもしろいし、楽しいんだろうな、というのはなんとなく伝わってくる。そして、ヒップホップも同じなのだろう。ただ、俺はそこまでディープに入れ込んでいるわけじゃないし、従来の音楽との接し方に慣れてしまったので、ここで語られている「場を楽しむ」ということがまだ経験出来ていないけれど。


これらの他にもヒップホップの歴史、ヒップホップの音楽的な特徴とその変遷について、丁寧に分かりやすく、理解しやすく、さらにはユーモア溢れる形で語られている。こちらについては今回は割愛。頑張ればネットでも調べられる内容だと思うし、もしくはこの本を購入し読むか。また、当然ではあるが、この本にはいろんなアーティストの作品が語られていて、プチディスクガイドみたいなものも書かれている。知らないレコードも多くあったので、時間があるときに聴いてみる。


★★★★★


ところで、ブログ書き的に面白い記述があったので引用する。

長谷川:こういう芸名を名乗るのって、コンピューターゲームでプレイヤーが主人公に名前を付けることと似ていると思うんですよ。「この世界では、俺はこの名前で戦いますよ」的な。
大和田:だからジャズもブルースもヒップホップも自己表現というよりはゲームであると。そしてその世界でひとつのキャラクターを演じるんだと。

ブログも同じ。ブログはヒップホップだ!(暴論)


★★★★★


コレを聴きながら書いた。良い。

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